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自由と正義2026年2月号
自由と正義の処分内容から、弁護士の懲戒請求対応を学んでいきたいと思います。
今月号は、
単位会の懲戒 3件
| 戒告 | 2件 |
| 業務停止1月 | 1件 |
日弁連
異議申出 業務停止6月から9月に
審査請求 業務停止1年→業務停止10月
単位会の懲戒
愛知県弁護士会 業務停止1月
被懲戒者は、懲戒請求者がAを被告として提起した立替金請求事件において、被告代理人として訴訟を追行したところ、提出すべき資料の提出を怠ったまま2023年2月27日、同年5月29日及び同年6月29日の口頭弁論期日を欠席したことにより、裁判手続を遅延させた。
被懲戒者の上記行為は、弁護士職務基本規程第76条に違反し、弁護士法第56条第1項に定める弁護士としての品位を失うべき非行に該当する。
裁判手続の遅延違反(基本規程76条)です。
訴訟の内容から推測するに、有効な抗弁が見当たらないまま時間を稼ぐことに終始してしまったということでしょうか。この手の裁判ですと、時間稼ぎには限界がありますが、具体的な立証予定などをあげて期日を空転させてしまったようにも思われます。
神奈川県弁護士会 戒告
被懲戒者は、2023年2月19日、懲戒請求者から、同人を被告とする損害賠償請求訴訟を受任したところ、同年3月1日に予定されていた上記訴訟の第2回口頭弁論期日を第1回口頭弁論期日であると誤解して、懲戒請求者が本人自身で訴状の請求原因に対して認否反論する準備書面は提出しないでおくよう指示し、上記期日までに訴訟代理人として訴状の請求原因に対して認否反論する準備書面の提出もせず、裁判所に訴訟委任状も提出せず、上記期日に出頭することもなく、上記期日経過後速やかに次回期日の確認もせず、同月10日、懲戒請求者に請求の全部認容の判決を受けさせた。
被懲戒者の上記行為は、弁護士法第56条第1項に定める弁護士としての品位を失うべき非行に該当する。
これも、1番目の事案同様、時間を稼ごうとしてた事案のように思われます。第2回口頭弁論期日を第1回口頭弁論期日と誤解したことによって、実質答弁を出すことなく全額認容判決が出てしまったとのことですが、控訴によってリカバーすることができたのかどうかが気になります。
岡山弁護士会 戒告
被懲戒者は、2023年1月25日、懲戒請求者から離婚訴訟等の依頼を受け、着手金22万円を受領し、同年2月3日、委任契約を締結したが、事務職員の指導及び監督を適正に行わず、その結果として2024年7月まで懲戒請求者に訴状案を送らず、懲戒請求者と何らの連絡も協議もしなかった。
被懲戒者の上記行為は、弁護士職務基本規程第19条、第35条及び第36条に違反し、弁護士法第56条第1項に定める弁護士としての品位を失うべき非行に該当する。
事務職員への指導監督、事件放置の事案です。結論として「事務職員の指導及び家督を適正に行わず」という認定がなされていますが、自身は事務職員に適切に指示はしていたものの職員が放置したという認定であるように読めます。事案によってはそれでも自身の放置だという評価になってもおかしくないかもしれません。
日弁連
異議申出 業務停止6月→業務停止9月
(1) 被懲戒者は、懲戒請求者からの受任業務について、財産分与審判の審判期日を3期日無断で出頭しなかったことにより申立ての取下げ擬制となるなどの任務懈怠により懲戒請求者の財産分与の協議に代わる処分を家庭裁判所に求める権利を喪失させるとともに(懲戒請求事由1)、事件の経過等の報告を懈怠し(懲戒請求事由2)、また、委任の終了後に預り金を返還しなかった(懲戒請求事由3)。その上、被懲戒者は、懲戒請求者が喪失した権利の被害回復の対応すら一切行わず、原弁護士会の紛議調停手続にも全く応じていない。
さらには、被懲戒者は、原弁護士会綱紀委員会の調査手続及び原弁護士会懲戒委員会の審査手続において主張及び立証を全く行わず、原弁護士会綱紀委員会の調査期日及び原弁護士会懲戒委員会の審査期日にも連絡もないまま全て欠席し、本会懲戒委員会の審査手続においても何らの書面提出も行わず、審査期日に出席しなかった。
他方、被懲戒者は、原弁護士会に本件懲戒請求が係属中も上場企業の社外取締役を務めていたのであって、懲戒請求者への対応や、懲戒手続への応答等ができない事情があるとは認め難い。
以上からすれば、被懲戒者は、自らの行為を全く反省しておらず、弁護士自治の根幹をなす懲戒手続を無視し、拒絶したに等しいものであり、弁護士法第45条第2項による被懲戒者に対する指導及び監督を果たすには、厳しい判断とすることによるほかいない。
(2) したがって、本件異議の申出には理由があるものと認め、被懲戒者の業務を6月間停止するとした原弁護士会の処分を変更し、被懲戒者の業務を9月間停止することが相当である。
単位会において業務停止6月の懲戒処分がなされていたのを、同9月に加重する非常に厳しい判断がなされています。
もっとも、判断の内容を見ると、懲戒請求者に一切の被害弁償をしておらず、紛議調停、単位会の綱紀委員会の調査期日、懲戒委員会の審査期日もいずれも書面提出しないまま欠席していることが重視されているようです。横領事案や会費滞納事案など、実質的に弁護士活動を継続することが期待できない事案では時々見られるものの、この方は社外取締役を務めているなどまだまだ活動をしているとのことで、非常に珍しい対応です。
懲戒請求を受けた後の対応が非常に重要であることが分かります。
審査請求 業務停止1年→業務停止10月
(1) 原弁護士会は、本件懲戒請求事件につき、審査請求人を業務停止1年の処分に付した。
(2) 本会懲戒委員会が、審査請求人から新たに提出された証拠も含め審査した結果、次のとおり判断した。
(3) 審査請求人の行った、自身の携帯電話を勾留中の被告人に使用させるという行為は、弁護人との接見交通権を濫用し、被告人が弁護人以外の者との接見の制約を潜脱することに加担する行為であって、接見交通に対する社会的信頼を揺るがす重大な非行である。また、審査請求人の上記行為は、約2か月の期間において、20回という多数回にわたってなされており、その非行の程度は重い。その上、被告人は、審査請求人から借りた携帯電話で、複数名との間での集会ないし会合となるような通話をしたこともあり、弁護士によるスクリーニングが困難な状況があったにもかかわらず、審査請求人は、その後も被告人に携帯電話を使用させ続けたものであり、その悪質性は強い。
(4) しかしながら、本件においては、当時、被告人に接見等を禁止する決定はなされておらず、また、審査請求人は、弁護活動の必要があれば例外的に被告人と外部との通話が許される場合があるとしていた以前の考えを改め、外部との通話が許される場合はないと考えるに至り、反省を深めている。同種の先例における処分の程度も踏まえた上でこれらを考慮すると、原弁護士会のなした業務停止1年の処分は重きに過ぎ、審査請求人の業務を10月間停止することが相当である。
もともとかなりの重大事案ではあったものの、業務停止期間が短縮された珍しい事案です。過ちを認め反省の態度を示したことにあわせ、同種の先例との比較で「重きに過ぎ」という認定を勝ち取ったと言えます。
