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自由と正義2025年11月号
自由と正義の処分内容から、弁護士の懲戒請求対応を学んでいきたいと思います。
今月号は、
単位会の懲戒 10件
| 戒告 | 5件 |
| 業務停止1月 | 1件 |
| 業務停止3月 | 3件 |
| 退会命令 | 1件 |
日弁連
業務停止1年6月 1件(単位会業務停止1年→異議申出)
審査請求棄却 4件
単位会の懲戒
東京弁護士会 戒告
被懲戒者は、懲戒請求者株式会社A名義のアカウントにひも付くYouTubeチャンネルに被懲戒者が主演する動画を懲戒請求者A社が作成、編集しアップロードしていたところ、約200人のメンバーがいたLINEグループにおいて、2021年12月2日頃に「お金を払ったのに、これまで作成した動画のデータ引き渡し拒否」「チャンネルを人質とし、自分に仕事を回せという脅迫に近い要求」「1本10万の編集料ふっかけてくる」「契約書すらないのに、俺の著作権や肖像権は一切無視」等と懲戒請求者A社の代表取締役である懲戒請求者Bの社会的評価を低下させる投稿や、同月23日には「詐欺師のくそ粘着」と懲戒請求者Bの名誉感情を著しく害する投稿をし、遅くとも2022年1月5日には、Googleマップ上で表示される懲戒請求者A社に関するレビューとして、「サービスは他の業者の半分以下の仕事で倍以上の値段をとる」旨、「編集だけやってやるから自撮りで撮影しやがれ」「お前に肖像権や著作権はない」等と告げられた旨等の懲戒請求者A社の社会的評価を低下させる投稿をした。
被懲戒者の上記行為は、弁護士法第56条第1項に定める弁護士としての品位を失うべき非行に該当する。
ご本人は、正当な論評であるというご主張をされていたのではないかと想像します。この手の懲戒請求は、対応によってかなり結果が変わる可能性があります。
千葉県弁護士会 退会命令
(1) 被懲戒者は、2021年8月24日、懲戒請求者から損害賠償請求訴訟を受任し、同年9月29日、答弁書を提出したが、上記訴訟の初期の段階から懲戒請求者への連絡や同人との打合せを実施せず、書証の提出を一切せず、2022年11月18日に指定された尋問期日を懲戒請求者に知らせず、被懲戒者も当該期日に出頭せず、懲戒請求者が被告本人として尋問を受け、原告本人尋問において反対尋問をする機会を喪失させた上、2023年3月24日に言い渡された判決の結果を懲戒請求者に知らせずに、控訴期間を徒過させた。
(2) 被懲戒者は、上記(1)の訴訟において、2021年12月21日に行われた弁論準備期日以降、自ら書証等を提出する旨述べ、裁判所から再三にわたり書証等を提出を指示されるも、一切提出せず、合理的な理由や提出見込み等の説明もなく、開催された10回の弁論準備期日のうち7回の期日を空転させた。
(3) 被懲戒者は、2023年2月分及び同年5月分から同年12月分までの所属弁護士会の会費を滞納した。
(4) 被懲戒者の上記(1)の行為は弁護士職務基本規程第36条及び第44条に、上記(2)の行為は同規程第76条に、上記(3)の行為は所属弁護士会の会則第121条第1項に違反し、いずれも弁護士法第56条第1項に定める弁護士としての品位を失うべき非行に該当する。
弁護士会が発表しているところによると、弁護士会による聴き取りなどの連絡に一切応じていないとのこと。
兵庫県弁護士会 業務停止1月
(1) 被懲戒者は、A弁護士が経営し、懲戒請求者を事務職員とする法律事務所に勤務弁護士として入所し、一部を除く全ての案件について受任状には受任者として被懲戒者とA弁護士の2名を記載し、委任契約書も受任者として2名の弁護士が記名押印して作成する形を採り、領収書等はA弁護士名義で発行し、入金口座や経費引落し口座もA弁護士の口座が利用されており、2021年頃以降、被懲戒者が実質的に事件処理を行う状況となっていたところ、2023年8月5日、Bから、着手金91万円、実費を含む事務手数料2万円として遺産分割事件を受任したが、その際、意図的に、着手金91万円、実費を含む事務手数料2万円と記載した委任契約書と、着手金15万円、実費を含む事務手数料1万円と記載された2種類の委任契約書を作成し、Bに何ら説明することなく前者の委任契約書のみをBに交付した。また、Bから消費税を加えた102万3000円を受領し、同額のA弁護士名義の領収書を作成し、Bに交付したにもかかわらず、その後、後者の委任契約書に記載された着手金15万円、実費を含む事務手数料1万円に消費税を加えた17万6000円のA弁護士名義の領収書の控えを作成し、これとともに現金17万6000円をA弁護士名義の預金口座で保管した。
(2) 被懲戒者は、委任契約書に受任弁護士と併記され、かつ領収書の発行者であるA弁護士に対し、意図的に内容の異なる2種類の委任契約書を作成し、Bから実際に受け取り、A弁護士名の領収書を交付した金額について正しい内容の説明、報告をしなかった。
(3) 被懲戒者は、上記(1)の事務所を退職するに当たり、2023年9月5日、A弁護士の了解を得ず、また、上記事務所に通知せず、夜間に事件記録ファイル及び経理資料である請求書等のファイルを搬出した。
(4) 被懲戒者は、2021年頃以降、被懲戒者が実質的に事件処理を行う状況となり、被懲戒者が実質単独受任であると主張する状態にあったのに、上記(1)の事務所在籍当時から削除するまで、自身のホームページや弁護士検索サイトに、自身のプロフィール情報として、「私は雇用契約です」「弁護士歴44年の経験豊富な敏腕弁護士と二人体制で問題解決にあたる、全ての案件を必ず共同受任する」旨の事実に合致せず、誤導又は誤認のおそれのある広告を行い、上記事務所を退所して新事務所を設立した後も明らかに反する広告を行った。
(5) 被懲戒者の上記(1)及び(2)の行為は弁護士職務基本規程第5条及び第6条に、上記(3)の行為は同規程第5条及び第71条に、上記(4)の行為は同規程第9条及び弁護士等の業務広告に関する規程第3条に違反し、いずれも弁護士法第56条第1項に定める弁護士としての品位を失うべき非行に該当する。
(1)については、この記載のみから実態がどのようなものであったかは判断しづらいところです。ただ、(4)については、自社サイトや検索サイトはあくまで広告であり、内部における主張と外部に対する表現に差異があっても、「誤導又は誤認のおそれのある」広告であると断ずることは(少なくともこの記載上は、また懲戒事由とすることは)、酷ではないかという感想を持ちました。
大阪弁護士会 業務停止3月
被懲戒者は、Aの成年後見人であったところ、2021年3月22日にAが死亡し、同日、A名義の貯金から300万円の払戻しを受け、同月31日にAの葬儀費用を支払った後、Aの相続人に対し、払戻しを受けた300万円の使途等を説明せず、300万円から費用を差し引いた残金を引き渡さなかった。
被懲戒者の上記行為は、弁護士職務基本規程第45条の趣旨に違反し、弁護士法第56条第1項に定める弁護士としての品位を失うべき非行に該当する。
弁護士職務基本規程45条は「預り金等の返還」に関する規定です。本件でいう相続財産は、同条の「預り金」ではないが、本来、成年後見人の業務として、相続財産を相続人に対して速やかに引き継ぐべきであった、という意味で「趣旨に違反」という表現になっているものと思われます。
東京弁護士会 戒告
(1) 被懲戒者は、2022年8月1日、有限会社Aが懲戒請求者株式会社Bに対して提起した不当利得返還請求訴訟の対応を懲戒請求者B社から依頼され、訴訟代理人であったところ、裁判所からの再三にわたる懲戒請求者B社代表者の尋問に係る証拠申出書や陳述書の提出の要請を無視し、また、同年12月20日にA社及び懲戒請求者B社の各代表者の尋問が実施される予定であることを承知しながら尋問期日に出席しなかった。
(2) 被懲戒者は、懲戒請求者B社と協議し、意思確認をすることなく、2023年1月17日、結審後の上記(1)の訴訟において、懲戒請求者B社がA社に解決金を支払うこと等を内容とする和解を提案する上申書を提出した。
(3) 被懲戒者の上記各行為は、いずれも弁護士法第56条第1項に定める弁護士としての品位を失うべき非行に該当する。
訴訟行為の怠慢とされる事例です。(2)の事由は、(1)の事由を隠すため?弁護士がBのために解決金を払うことで解決をしようとしたということでしょうか。
東京弁護士会 戒告
(1) 被懲戒者は、2020年1月28日、懲戒請求者から、遺産分割調停の申立てを受任し、同年3月17日、遺産分割調停を申し立て、期日が開催された後、2021年7月2日付け取下書を提出したことにより終了したところ、懲戒請求者から、2022年6月10日付け手紙等にて、複数回にわたって上記調停の報告書を提出するよう求められたにもかかわらず、応じなかった。
(2) 被懲戒者は、2021年1月21日、懲戒請求者から、所有権確認訴訟の提起を受任し、同月29日、着手金22万円及び実費等として預り金10万円を受領したにもかかわらず、懲戒請求者から解任の意思表示を受けた2023年6月5日までの間、訴状の作成すら行わず、上記訴訟提起の準備を行わなかった。
(3) 被懲戒者の上記各行為は、いずれも弁護士法第56条第1項に定める弁護士としての品位を失うべき非行に該当する。
事件放置事案です。
第二東京弁護士会 業務停止3月
(1) 被懲戒者は、所属弁護士会から業務停止1月の懲戒処分に処され、2023年10月5日から同年11月4日までの業務停止期間中、同年10月12日付け訴えの追加的変更申立書を、また、同月23日付け訴状及び同月19日付け訴訟委任状を裁判所に郵送にて提出し、訴訟代理人としての弁護士業務を行った。
(2) 被懲戒者は、所属弁護士会から、上記(1)の懲戒処分につき業務停止期間中の遵守事項の履行を求められたが、その指導監督に服さず、受任事件の辞任に関する措置、弁護士及び法律事務所であることを表示する表札、看板等の一切の表示の撤去、弁護士記章の返還、所属弁護士会が求める連絡要請への対応、その他必要な措置を採らなかった。
(3) 被懲戒者の上記各行為は、いずれも弁護士法第56条第1項に定める弁護士としての品位を失うべき非行に該当する。
業務停止中の業務事案です。業務停止中の訴訟行為については、必ず裁判所から弁護士会に対して報告が行くので、バレます。
第二東京弁護士会 戒告
(1) 被懲戒者は、懲戒請求者の所有する土地及び上記土地上の建物に関し、懲戒請求者から、2018年3月27日、Aを相手方とする建物収去土地明渡請求事件を、同年8月19日、Aを相手方とする上記建物収去土地明渡請求に関する仮処分事件を受任するに当たり、弁護士報酬に関し、経済的利益の価額を対象たる物の時価の2分の1ではなく時価そのものに基づく3500万円と設定することについて、適切な説明を怠った。
(2) 被懲戒者は、上記(1)の建物収去土地明渡請求事件について、2018年12月12日、懲戒請求者から、訴訟を開始しないよう求める懲戒請求者名義の通知書を受領し、その内容を認識したにもかかわらず、同月19日、上記事件の訴状を裁判所に提出した。
(3) 被懲戒者の上記(1)の行為は弁護士職務基本規程第29条第1項に、上記(2)の行為は同規程第22条第1項に違反し、いずれも弁護士法第56条第1項に定める弁護士としての品位を失うべき非行に該当する。
委任契約時の説明義務違反の事案です。弁護士報酬基準は自由化されていますので、報酬基準自体は自由で問題ないのですが、多くの弁護士が旧報酬基準をそのまま事務所の報酬基準として使っているのが実態です。そうすると、事務所の報酬基準上、経済的利益の算定方法に関して適用があるはずの算定方法について説明がないとどうしても説明義務違反になってしまいます。「契約書に記載があるのだから合意しているんだ」という主張をよく見ますが、それだけでは、その基準を適用しなかった説明がなされたとは言えません。
京都弁護士会 業務停止3月
(1) 被懲戒者は、2023年10月9日、懲戒請求者との間で刑事事件に関する委任契約を締結したところ、同年11月頃から連絡が取りづらくなり、同年12月頃には懲戒請求者が被懲戒者に対し再三にわたって連絡をするも応答がほとんどなくなり、同月20日に苦情を述べる懲戒請求者のLINEに返信した後同年中の連絡は途絶え、2024年1月中に懲戒請求者から送信されたLINEに対し応答しなかった。
(2) 被懲戒者は、上記(1)の委任契約を締結し、着手金33万円を受領したにもかかわらず、その後懲戒請求者が被懲戒者を解任した2024年3月5日までの間に何ら具体的な事務処理を行わなかった。
(3) 被懲戒者は、遅くとも2024年3月15日には、懲戒請求者との間で委任契約解消に基づく着手金返還の合意が成立したにもかかわらず、何らの説明もしないまま履行しなかった。
(4) 被懲戒者の上記(1)の行為は弁護士職務基本規程第36条に、上記(2)の行為は同規程第35条に、上記(3)の行為は同規程第26条に違反し、いずれも弁護士法第56条第1項に定める弁護士としての品位を失うべき非行に該当する。
刑事事件の事件放置事案です。2023年10月に委任契約締結から2024年3月に解任で終了しており、その間約5か月ですが、刑事事件であることから迅速な対応が求められるということになるのでしょう。
東京弁護士会 戒告
被懲戒者は、A、Aの配偶者であるB及びBの養親であるCから、刑事事件とは直接の関係を有しない親子関係や養子縁組に関する事項についての意思確認や事務連絡等を依頼され、2020年11月17日、これを主たる目的として、接見等禁止決定が付されているAと、刑務所内の接見室において弁護人となろうとする者として接見した際、自身のスマートフォンでAを撮影し、撮影した画像データを接見等禁止対象のCに電子メールで送信した。
被懲戒者の上記行為は、弁護士職務基本規程第5条に違反し、弁護士法第56条第1項に定める弁護士としての品位を失うべき非行に該当する。
接見の不正利用といえる事案です。懲戒請求者の記載がないので、おそらく施設管理者なのかもしれません。「弁護人となろうとする者」の資格による接見は、職務上請求と並んで不正利用に目を光らせられている印象があります。
東京弁護士会 業務停止3月
被懲戒者は、所属弁護士会から2024年5月4日に業務停止2月の懲戒処分を受けたところ、業務停止中であったにもかかわらず、受任していた事件について裁判所に対して代理人辞任の手続を行わず、同年8日から同月22日にかけて、地方裁判所の民事事件、家庭裁判所の人事訴訟事件及び高等裁判所の民事事件における訴訟手続を行った。
被懲戒者の上記行為は、所属弁護士会の被懲戒弁護士の業務停止中の遵守事項に関する会規第3条第1項に違反し、弁護士法第56条第1項に定める弁護士としての品位を失うべき非行に該当する。
業務停止中の業務事案です。
日弁連の公告
日弁連(異議申出による原決定取消) 業務停止1年6月
(1) 被懲戒者は、自己が預かった異議申出人Aの子である異議申出人B名義及び同じく異議申出人Aの子であるC名義のキャッシュカードを用いて金融機関から金員を引き出すなどして、当該金員を自己のために費消した等の理由で懲戒請求され、原弁護士会は、被懲戒者を業務停止1年の処分に付した。
(2) 本件は、被懲戒者が、刑事事件の依頼者である異議申出人Aから信頼されていることをよいことに、同人から業務上預かっていたキャッシュカードを不正に使用して、異議申出人Aの子である異議申出人B名義及び同じく異議申出人Aの子であるC名義の各預金口座から合計5947万4150円もの多額の金員を引き出し、あるいは被懲戒者名義の預金口座に送金し、そのうち約5647万円ないし約5747万円を自己のFX投資に費消したものである。
C名義の預金口座は障害年金が振り込まれる口座であったことに加え、被懲戒者による引出金額が巨額であり、また非常にハイリスクな投資に使用されたことに鑑みれば、被懲戒者の本件非行の情状は極めて悪質であって、弁護士に対する社会の信頼を著しく損なうものと言わざるを得ない。
したがって、被懲戒者が、①異議申出人Aに対し、その子らの預金口座から引き出すなどした金額を超える6001万6616円を返済していること、②異議申出人Aの刑事事件の弁護を上告審まで担当し、その業務は膨大な時間を費やすもので、相当に困難であったとうかがえるにもかかわらず、全く報酬を受領していないこと、③過去に懲戒処分を受けたことがないことなど、被懲戒者に有利な情状を最大限考慮しても、原弁護士会の被懲戒者を業務停止1年とするとの処分は軽きに過ぎて不当であり、変更を免れず、上述した諸般の事情に鑑みると、原弁護士会の処分を変更し、被懲戒者の業務を1年6月間停止することが相当である。
もともと単位会(東京弁護士会)が業務停止1年の処分をしたところ、懲戒請求者からの異議の申出により、原処分が変更され、業務停止1年6月となった事案です。
確かに認定事実を見ると、相当長期の業務停止はやむを得ないように思われますが、既に業務停止1年の懲戒処分がされているにもかかわらず、これをさらに変更して加重するまでの内容であるとすると非常に厳しい印象です。
なお、原処分(業務停止1年)は2024年5月16日に効力が発生しているので、2025年5月15日には業務停止期間が終了していたわけですが、今回、2025年9月11日に効力を生ずる処分の変更があったため、事実上、2度目の業務停止期間が始まることになったものと思われます。
