弁護士向け

自由と正義2026年1月号【懲戒処分分析】

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自由と正義2026年1月号

自由と正義の処分内容から、弁護士の懲戒請求対応を学んでいきたいと思います。

今月号は、

単位会の懲戒 8件

戒告5件
業務停止4月1件
業務停止10月1件
業務停止1年1件

日弁連

日弁連の懲戒 1件 (業務停止6月)

単位会の懲戒

茨城県弁護士会 戒告

被懲戒者は、2012年11月28日、懲戒請求者及び同人の父が保有する有限会社Aの株式を、Bに8000万円で譲渡する内容の合意書等の作成について依頼を受け、懲戒請求者が合意書作成に向けたやり取りを主導し、被懲戒者が懲戒請求者らから聴取した希望及び事情を踏まえ、必要な情報の取捨選択を行い、法的観点からの整理を試みて上記合意書の作成業務を遂行したところ、その後、懲戒請求者が、B及びA社に対し、自身がA社の株主であることを確認と上記合意書による株式譲渡の無効確認を求めて提起した上記合意書の内容、作成経緯等が争われた訴訟において、B及びA社の訴訟代理人として訴訟を追行した。

被懲戒者の上記行為は、弁護士法第25条第1号及び弁護士職務基本規程第27条第1号に抵触し、同法第56条第1項に定める弁護士としての品位を失うべき非行に該当する。

利益相反の事案です。
弁護士職務基本規程27条1号は、「相手方の協議を受けて賛助し、又はその依頼を承諾した事件」について受任できないとされています。本件においては、合意書作成過程に関与した弁護士が、その有効性を争う訴訟において、契約の相手方の代理人となり訴訟追行したとのことのようです。弁護士にとって誰が「依頼者」の認識に齟齬があったのかも知れません。

福岡県弁護士会 戒告

福岡県弁護士会 戒告

(1)被懲戒者は、同じ法律事務所に所属するA弁護士と共に、懲戒請求者法人Bの依頼を受けて、懲戒請求者法人Bに対する行政処分の仮の差止請求事件等を提起していたところ、上記行政処分がなされたことから、2022年9月9日、上記仮の差止請求事件から請求の趣旨を変更して処分取消請求事件を提起し、併せて執行停止事件の申立てを行ったが、執行停止決定が出た後の同年10月5日まで、本案とは別に、執行停止事件について報酬が発生することを説明しなかった。

(2) 被懲戒者は、上記(1)の事件の受任に当たり、委任契約書を作成しなかった。

(3) 被懲戒者の上記(1)の行為は弁護士職務基本規程第29条第1項に、上記(2)の行為は同規程第30条に違反し、いずれも弁護士法第56条第1項に定める弁護士としての品位を失うべき非行に該当する。

報酬の説明義務違反と委任契約書不作成に関する事案です。最初の事件を受任する際にはほとんどの弁護士が委任契約書を作成すると思われますが、事件の進行によって委任事務の内容が変容することがあります。その際、委任事務の変更ないし報酬の追加について合意を取ることは、契約書作成義務の履行であるのみならず、報酬に関する双方の認識の違いを防止することにもつながります。その意味で、(2)の違反がなければ(1)の違反も防ぐことができたと言えます。

なお、本件は同一事務所に所属する共同代理人が同時に処分されています。

東京弁護士会 戒告

被懲戒者は、2022年11月13日、懲戒請求者から損害賠償請求事件を受任したところ、2023年5月12日以降同年9月に解任されるまでの間、懲戒請求者からの連絡に応答せず、懲戒請求者に対して事件処理の経過を全く報告せず、また、解任された後も事件処理の状況に関して説明を行わなかった。

被懲戒者の上記行為は、弁護士職務基本規程第36条及び第44条に違反し、弁護士法第56条第1項に定める弁護士としての品位を失うべき非行に該当する。

事件に関する報告義務違反です。

仙台弁護士会 業務停止4月

(1) 被懲戒者は、懲戒請求者から、2023年1月10日、建物賃貸借契約及び建物売買契約解除に関する簡易裁判所に対する民事調停の申立てを受任し、その際、着手金12万1000円を受領したところ、2024年5月下旬頃、懲戒請求者に対し、調停を申し立てたと述べたが、同月30日時点で、上記申立てを行っていなかった。

(2) 被懲戒者は、2023年5月17日、自己破産申立事件を委任した依頼者2名から予納金としてそれぞれ150万円、合計300万円を受領し、2024年6月3日、私選受任した刑事事件の依頼者から示談金として100万円を受領したが、預り金の合計400万円のうち少なくとも399万5483円を預かった目的以外に使用した。

(3) 被懲戒者の上記(1)の行為は弁護士職務基本規程第35条に、上記(2)の行為は預り金等の取扱いに関する規程第2条に違反し、いずれも弁護士法第56条第1項に定める弁護士としての品位を失うべき非行に該当する。

事件放置及び虚偽報告、預り金の目的外流用事案です。

東京弁護士会 戒告

被懲戒者は、2023年5月分から2024年8月分まで16か月分の所属弁護士会の会費並びに日本弁護士連合会の会費及び特別会費合計42万8300円を滞納した。

被懲戒者の上記行為は、所属弁護士会の会則第27条第1項に違反し、弁護士法第56条第1項に定める弁護士としての品位を失うべき非行に該当する。

会費滞納事案です。会費滞納で戒告で済むのは比較的珍しいと言えます。

大阪弁護士会 業務停止1年

(1) 被懲戒者は、懲戒請求者Aから、交通事故の相手方に対する損害賠償請求事件を受任したところ、2024年4月12日、相手方が契約する保険会社から和解金1400万円の支払いを受けたものの、懲戒請求者Aの問合せに対し、示談交渉中である旨の虚偽の返答をし、和解の成立及び和解金の受領を秘匿して、和解金を引き渡さずに事務所経費、生活費等に費消した。

(2) 被懲戒者は、懲戒請求者Bから、Cに対する損害賠償請求の交渉等を受任したところ、2024年9月頃にCから和解金275万円を受領したが、これを事務所経費、生活費等に費消した。

(3) 被懲戒者の上記各行為は、いずれも弁護士職務基本規程第45条に違反し、弁護士法第56条第1項に定める弁護士としての品位を失うべき非行に該当する。

預り金の私的流用事案です。金額が比較的大きいことから、重い処分となりました。

京都弁護士会 業務停止10月

被懲戒者は、2021年9月頃、懲戒請求者の私選弁護人に就任し、同月頃から2024年5月頃までの間、懲戒請求者から同人名義の預金通帳2通及びキャッシュカード各1枚を預かり保管し、家賃の支払その他債務の弁済等の事務を行っていたところ、上記キャッシュカードにより出金した総額712万4000円のうち懲戒請求者のために使用されたと考えられるものを除く金員につき、懲戒請求者に対し、その使途について具体的な説明をせず、返還をしなかった。

被懲戒者の上記行為は、弁護士職務基本規程第44条及び第45条に違反し、弁護士法第56条第1項に定める弁護士としての品位を失うべき非行に該当する。

説明義務違反、 預り金の返還義務違反です。
本件はともかく、刑事事件の被疑者被告人からお金を下ろすよう依頼をされることがあり、みなさん対応に悩むところだとおもいます。その依頼を受けるかどうかは、諸々の状況を踏まえた各弁護人の判断だとは思いますが、どんなお金がいくら入っているか分からない中でお金を下ろすというのは非常にリスクが高い行為です。
暗証番号相違などのトラブルがあったとき、係員にどのように説明するのかということを想像したこともありました。

日弁連の懲戒

 日弁連(第一東京弁護士会所属外国法事務弁護士) 業務停止6月

(1) 被懲戒者は、2022年10月上旬頃、懲戒請求者との間で、ビザの申請等に係る委任契約を締結し、同月10日、懲戒請求者から、上記委任契約に基づく報酬等として97万4160円の支払いを受け、2023年1月頃までにパスポート等を預託されたが、懲戒請求者からのメールに適時に返信せず、懲戒請求者との打合せを3回連続でキャンセルするなどし、懲戒請求者から、同年4月11日付けのメールにより上記委任契約に基づく委任事務の履行を催促され、翌12日付けのメールにより、ビザの申請を行う時期について尋ねられたにもかかわらず、明確な回答をせず、懲戒請求者から送付された上記委任契約を解除する旨の書面を同年10月12日に受領するまで上記委任事務の履行をしなかった。

(2) 被懲戒者は、上記(1)の委任契約に関し、2023年6月15日付けのメールで、懲戒請求者から弁護士を替えたい旨申し向けられるとともに支払済みの報酬等及びパスポート等の返還を求められたが、翌16日、上記委任契約に基づく委任事務を自分で完了したい旨回答して懲戒請求者の要求を拒否し、同年7月27日、懲戒請求者に対し、大使館での面接が同年8月28日に決まった旨の虚偽の報告を行った。

(3) 被懲戒者は、懲戒請求者から送付された上記(1)の委任契約の解除及び支払済みの報酬等の返還を請求する旨の書面を2023年10月12日に受領したが、懲戒請求者に連絡をせず、懲戒請求者が被懲戒者に対し同年12月4日に提起した97万4160円等の支払を求める訴訟につき、懲戒請求者の請求を認容する判決が2024年2月26日の経過により確定した後も、懲戒請求者に対し、報酬等を返還しなかった。

(4) 被懲戒者の上記(1)の行為は外国法事務弁護士等職務基本規程第35条及び第36条に、上記(2)の行為は同規程第5条及び第43条に、上記(3)の行為は同規程第44条及び第45条に違反し、いずれも外国弁護士による法律事務の取扱い等に関する法律第83条第1項に定める外国法事務弁護士としての品位を失うべき非行に該当する。

外国法事務弁護士に対する日弁連の懲戒処分という非常に珍しい類型です。
弁護士は、弁護士法56条1項及び2項により単位会が懲戒するのが原則です(例外的に弁護士法60条によって、日弁連が処分することがあります。)。しかし外国法事務弁護士の場合、外国弁護士による法律事務の取扱い等に関する法律第83条1項によって、日弁連が懲戒します。懲戒請求も、単位会を通じて日弁連に対して懲戒を求めることになります(同85条)。

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