自由と正義2026年3月号
自由と正義の処分内容から、弁護士の懲戒請求対応を学んでいきたいと思います。
今月号は、
単位会の懲戒 4件 (今回はすべて業務停止以上でした)
| 業務停止2月 | 1件 |
| 業務停止6月 | 2件 |
| 業務停止1年 | 1件 |
日弁連
審査請求棄却 1件
単位会の懲戒
大阪弁護士会 業務停止6月
(1) 被懲戒者は、懲戒請求者Aから養育費支払請求調停事件を受任し、2024年2月7日、家庭裁判所に調停を申し立てた後、調停手続を進めている中で、懲戒請求者Aと上記事件のことで連絡を取ることをせず、懲戒請求者Aから連絡を取ろうとしても連絡できず、同年6月12日の調停期日に出頭した際、遅刻した上に酒臭をさせ、体調が悪い、前の事件が続いて遅れたなどとうそを述べた。
(2) 被懲戒者は、上記(1)の事件につき、2024年6月18日付け解任通知文書にて懲戒請求者Aに解任された後、懲戒請求者Aが求めたにもかかわらず、着手金等の精算を一切せず、同年7月2日、懲戒請求者Aの申立てにより所属弁護士会の紛議調停に付されたものの、調停期日に出頭しなかった。
(3) 被懲戒者は、2021年8月、懲戒請求者B及び懲戒請求者Cから自己破産申立事件を受任したが、自己破産申立てまで合理的な理由なく2年もの時間を要し、2023年11月5日に申立てをした後、予納金の納付についての指示及び連絡並びに事件の経過や事件の帰趨に影響を及ぼす事項の報告を怠り、その結果、定められた期間内に破産手続費用の予納がなかったことを理由として、懲戒請求者Bらの破産手続開始申立てが棄却された。
(4) 被懲戒者の上記(2)の行為は弁護士職務基本規程第26条及び第45条に、上記(3)の行為は同規程第35条及び第36条に違反し、上記各行為はいずれも弁護士法第56条第1項に定める弁護士としての品位を失うべき非行に該当する。
紛議調停の不出頭、預り金の不返還、事件放置、報告義務違反の事案です。
今回の件においても紛議調停は解決の最後のチャンスだったといえますが、対応が困難な事情があったのかも知れません。
神奈川県弁護士会 業務停止1年
(1) 被懲戒者は、2024年2月末頃から詐欺被害事件の扱いを開始したところ、一定期間、自己のホームページの説明文やホームページ上に「解決実績多数」「弁護士費用が返金額を上回ることがないように…返金見込み額を提示します」「キャンセルはお受けいたしかねます」等と表示し、また、「返金請求診断」という操作ではどのような条件を選択しても、一律「お金を取り戻せる可能性があります」と表示されるようにした。
(2) 被懲戒者は、上記(1)の事件を受任するに当たり、SNSを通じた非対面型の詐欺については、被害金額を回収できる可能性は極めて低いにもかかわらず、被懲戒者のホームページを見て架電してきた相談者に対し、かかる説明をせず、受任した場合にどのような手続を行うのかやその手続による被害回復への見通し等の説明をせず、他方で、仮に口座開設者の特定ができたとしても、戸籍を特定して親に請求すること等が弁護士業務として妥当とは考えられないのに被懲戒者と直接の雇用関係にないAら事務職員とされる者らがその旨の説明をした。
(3) 被懲戒者は、上記(1)の事件を受任するに当たり、被害状況の聴取や事件の処理方針の立案及び説明の全てをAらに委ねた上、Aらが被害回復のなされないリスクを説明せず、むしろ直接被害金の返還義務のない加害者の親族や勤務先に連絡するとの回収方法を示したり、具体的な根拠がないまま回収可能性が高いとの見通しを示したりしたほか、実際には行っていない弁護士会照会の手続を進めている旨の虚偽の報告をしたりするなどの不当な対応を看過した。
(4) 被懲戒者は、上記(1)の事件を受任するに当たり、Aとの間で、着手金の10パーセントを報酬として受け取るという話を記し、着手金が振り込まれる被懲戒者の預り口口座を自ら管理せず、事務職員とされる者らに自由にアクセスできるようにさせ、事務職員とされる者らにおいて、上記口座に着手金として振り込まれた金額の中から、被懲戒者にその10パーセントより少ない額を振り込み、被懲戒者が知らない間に2つの会社に合計1億3200万円を送金した。
(5) 被懲戒者は、被懲戒者に依頼することを考えて架電してきた相談者に対し、事件の見通し等の説明、着手金の提示及び減額、契約締結等を弁護士法第72条から第74条までの規定に違反すると疑うに足りる相当な理由のある者であるAらに行わせ、弁護士名での口座凍結書面の提出等の業務も被懲戒者が関与しないままAらが行い、かかる業務体制の下、上記(1)の事件を2024年2月下旬から3月下旬にかけて月100件程度、2024年2月下旬から同年6月頃にかけての通算で少なくとも300件程度受任した。
(6) 被懲戒者は、2024年4月2日及び同月5日、懲戒請求者Bから詐欺被害金の返還請求事案を受任し、同年5月31日までに着手金300万円余を受領したが、上記(5)の業務体制の下、懲戒請求者Bに対し、3か月以上の間連絡せず、同年7月に一旦連絡が付いた後も返答を約束した期限内に連絡をせず、その後も懲戒請求者Bと連絡を取らなかった。
(7) 被懲戒者は、被懲戒者のホームページを通じて電話相談を申し込んだ懲戒請求者Cから、2024年6月5日、詐欺被害金の返還請求事案を受任したところ、上記(5)の業務体制の下、委任契約締結前の事案の聴き取りや方針の説明を専ら事務職員とされる者が行った。
(8) 被懲戒者は、懲戒請求者Dから詐欺被害救済事件を受任したところ、上記(5)の業務体制の下、懲戒請求者Dに対する聴き取り、事件処理や見通しの説明、契約締結、報告等を事務職員とされるEが担当し、Eが懲戒請求者Dに対し、口座開設者の本籍地を調べて親や親族に弁護士が請求に行く、5割返ってきた例もある等の説明をし、被懲戒者において説明内容を把握せず、指導監督をしなかった。
(9) 被懲戒者は、懲戒請求者Fから詐欺被害金の返還請求事件を受任したところ、上記(5)の業務体制の下、加害者に対する請求書の作成及び送付、加害者との連絡、懲戒請求者Fへの報告及び聴き取り等を事務職員とされるGが担当し、また、懲戒請求者Fが被懲戒者やGと連絡が取れなくなって以降上記事件を進展させず、懲戒請求者Fに対して被懲戒者や事務所と連絡が取れなくなった事情を説明しなかった。
(10) 被懲戒者の上記(1)の行為は弁護士等の業務広告に関する規程第3条及び弁護士職務基本規程第9条に、上記(2)の行為は同規程第29条に、上記(3)の行為は同規程第19条に、上記(4)の行為は同規程第12条に、上記(5)の行為は同規程第11条に、上記(6)の行為は同条、同規程第35条及び第36条に、上記(7)の行為は同規程第11条に、上記(8)の行為は同条、同規程第19条及び第29条に、上記(9)の行為は同規程第11条に違反し、いずれも弁護士法第56条第1項に定める弁護士としての品位を失うべき非行に該当する。
禁止される広告、受任時の説明義務違反、事務職員の監督義務違反、非弁提携事案です。
明らかに非弁業者に取り込まれた事案で、すべてがこの業者任せになっており自分でも収拾がつかなくなってしまっていることが容易に想像できます。非弁業者は若手、ベテランを問わず、巧みに忍び寄ってきます。名義を貸してしまったが最後、このような終わり方しかできなくなってしまいます。業務停止1年となりましたが、おそらくこれで終わりではなく、懲戒以外にもさらなる試練が待っているものと予想されます。
大分県弁護士会 業務停止2月
(1) 被懲戒者は、懲戒請求者らの親族であるAから、財産を守ることを主眼として相談され、2020年2月7日付けで、被懲戒者が代表理事を務める一般財団法人BとAとの間において、B法人がAの死亡時まで扶養を行い、AからB法人に自宅不動産、現金及び預貯金の全て並びに契約書に記載された動産を除く全ての動産を贈与し、AがB法人のために占有する意思表示を行うものとされている負担付贈与契約書が作成されたところ、B法人の代表理事として、同年4月7日付けでAに対し、上記契約書に記載がないにもかかわらず、生活水準にあった支出を毎月末日までにするように合意しているとして報告を求め、同年7月10日付けで、報告がない場合には、現金及び預貯金をB法人が直接管理し、自宅から退去を求めることになる旨を通知したが、上記契約書に係る契約を締結するに際し、適切な情報提供や説明をせず、委任の趣旨に反する上記契約の提案を行った。
(2) 被懲戒者は、Aが被懲戒者の事件処理について不満を有していたのであれば、真摯な説明をすることが求められるところ、2020年4月6日、侮辱罪や名誉毀損罪に該当するか不明確な行為を捉えて、同日のAからの架電がこれらの罪に該当するとして、警告書をAに発送した。
(3) 被懲戒者の上記(1)の行為は弁護士職務基本規程第22条第1項に違反し、上記各行為はいずれも弁護士法第56条第1項に定める弁護士としての品位を失うべき非行に該当する。
依頼者の意思尊重義務違反の事案です。
財産を守りたいという依頼者から、自身が代表理事を務める一般社団法人に対し自宅を含むほとんど全財産を贈与させるという内容で、なかなかに珍しい事案です。依頼者に対する説明義務が果たされてないということですが、利益相反なども慎重に判断するべきだったかもしれません。
東京弁護士会 業務停止6月
(1) 被懲戒者は、2023年3月20日から同年5月7日までにかけて、Aら4名の詐欺被害の被害者らと被害回復に関する委任契約をそれぞれ締結するに際し、いずれの被害者との間でも事情聴取、事件処理の見通し、処理の方法並びに弁護士報酬及び費用等の説明を自ら直接行わず、専ら事務員に行わせた上、これらを含むその後の上記被害者らへの対応を適切に行うべきことにつき、事務員に対する指導及び監督をしなかった。
(2) 被懲戒者は、2023年5月12日、懲戒請求者Bから詐欺被害回収の依頼を受け、被害金額に比して高額に過ぎる着手金を請求するに当たり、依頼者が納得できる十分な説明をしなかった。
(3) 被懲戒者は、2024年2月1日、投資詐欺被害につき、懲戒請求者Cとの間で、被害金の回収を目的とする委任契約を締結するに際し、回収が困難であることを説明せず、むしろ着手金の支払が早くなされれば被害回復が可能であると誤認させるような説明を行い、懲戒請求者Cに時間的余裕を与えることなく着手金の支払をさせ、また、被懲戒者に支払った金額以上の成果を得られない可能性があるとの説明をしていないにもかかわらず、所属弁護士会に提出する書面の上記説明を受けたとの項目にチェックするよう求めた。
(4) 被懲戒者の上記(2)及び(3)の行為は弁護士職務基本規程第29条第1項に違反し、上記各行為はいずれも弁護士法第56条第1項に定める弁護士としての品位を失うべき非行に該当する。
不当な事件の受任、説明義務違反の事案です。
詐欺被害の回収という、非弁提携が強く疑われる類型で、債務整理とは異なり解決そのものが極めて困難であることを考えると、この件も終局的な解決は困難を極めそうではあります。
