弁護士向け

ノースライムnoteから学ぶ懲戒請求対応【まずは相談】

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著書「懲戒請求・紛議調停を申し立てられた際の弁護士実務と心得」の共著者である北周士先生がこんなnoteを書かれています。

多くの弁護士にとって、業務停止以上の懲戒処分を受けた人がその後どうなっているかを知る機会はあまりなく、貴重なホラー読み物として人々の心をギュッとつかんだようですね。私も大昔に「転落弁護士」を読んで恐怖におののいたものです。

さて、X(Twitter)内ではさまざまな反応が見られました。ここで改めて、懲戒請求を受けたときに弁護士に相談することがいかに重要かということを振り返りたいと思います。

弁護士が懲戒請求されたときに弁護士に相談するべき4つの理由

①見通しを正しく持ち初手を誤らない

懲戒請求書を読んだ後の弁護士の反応として、①「これはまずい!オワタ!」というものと、②「なんだこれは!事実無根だ!断固闘う!」というものに大別されます(ここから分派した亜流はいくつかありますが)。

まず、初手としてこの反応が妥当なものかどうかを見極める必要があります。同じ資格者ですので、9割方は他の弁護士とも反応を共有できるケースです。実際、「弁明書を作ったのですがみてもらえますか?」という相談をいただくのですが、その大半が、くわしく事情を聞き取ってもご認識どおりということで「そのまま進めていただいて結構です」といって終わります。指さし確認として弁護士相談をご活用いただいているわけで、非常にうまい使い方だと思います。

で、問題は残り1割です。
第三者がみて「これはまずい」とおもうものを②の反応をしてしまったり、逆に闘うべきものを①の反応をしてしまったりすることにより初手を間違えた結果、2手目以降も全部チグハグになってしまうケースが散見されます。

第三者が「これはまずい」とおもうものに②の反応をするまずさは皆さんご理解いただけるものと思います。(例に出して本当に申し訳ないのですが)noteのえふ先生もこの初動を間違われてしまい、あのような結果になってしまったのかも知れません。

「闘うべきもの」を①の反応をしてしまうケースは少し説明が必要かも知れません。私はいくつか経験していますが、いずれも懲戒委員会対応から入ったケースです。
弁護士という生き物はとにかく自分のもめ事が苦手です。そうした方は、争いたくないがために全部認めて謝罪するという行動に出がちです。それがうまく行けばいいのですが、綱紀委員会で「非行を認めた」ということで請求事由に争いがなく、懲戒委員会の審査相当という議決がなされてしまうことがままあるのです。その段階で初めて第三者の目を入れる作業をするわけですが、その第三者が見ると「ここはこうして争えばよかったのではないですか?」というポイントが結構出てきます。このように新しい視点で懲戒請求対応をするわけですが、やはりそこで足かせになってくるのは、綱紀委員会段階において認めていた事実ないしその評価をひっくり返す困難さです。もちろん弁論主義が適用される場面ではないのですが、やはり弁護士がいちど認めてしまった事実は大きく、一筋縄ではいきません。

また、一見争いようがないと思われるケースでも、ご相談者との会話のキャッチボールでご本人が気づいていない視点や重要と思っていなかった事実から、意外な糸口が見つかることも多くあります。

適切な見通しに基づいた適切な初手を打つためにも、やはり弁護士に相談することは極めて重要です。

②どう説明すれば分かってもらえるかをシミュレーションする

懲戒請求に関して、第三者に「ね?不当でしょ?」と説明しても、その不当性が伝わらないことがあります。見立て自体が誤っているケースももちろんありますが、ご本人の見立てが仮に正しいとすると、悪いのは伝え方ということになります。

ご本人はもっとも事情をご存じですので、無意識にこちらもそれを知っている前提でお話をされることがあります。ご本人のお考えやご意向は尊重するのが私のスタイルですので、なんとか活かせる方法がないかどうかをさまざまな角度から問いかけをしてみると、そのあたりの論理を架橋できる重要な事実などがでてくることがあります。「ああ、そうおっしゃっていただければ理解できます!」となるわけですが、それは裏を返せばご自身の説明に論理の飛躍があったということ。

相談相手に分からないことは、綱紀委員会や懲戒委員会にも分かりません。相談すること自体、どう説明すれば分かってもらえるかのシミュレーションにもなります。

③抱え込むストレスを転嫁する

懲戒請求をされることのストレスは半端なものではありません。
厚労省も「相談」自体をストレス対処方法であることをうたっています。

何より、ストレス源そのものに対する対応としての相談が効果的であることは、弁護士自身が誰よりも熟知しているのではないでしょうか。

また、自分自身に対応する能力(スキル)があったとしても、自分自身で対応してしまうことで、ストレス自体を自分だけで丸抱えすることになってしまいます。

解決がうまく行かなかったときはもちろん、解決がうまくいったとしても、それによって自分が倒れてしまっては元も子もありません。

相談をすることで、自分が抱えているストレスを第三者に転嫁する効果もあります。

④懲戒に備える

最後に、なかなか考えたくないことですが、来てしまう懲戒処分に備えるということも必要です。

残念ながら、懲戒委員会が綱紀委員会と全然違う見方をした結果、思いも寄らない意外な懲戒処分に至るケースもあり、対応には万全を期する必要があります。

業務停止以上の懲戒処分においては、原則として受任中の事件を全て辞任しなければならず、懲戒処分のショックも癒えないまま大切なお客様を適切な弁護士に引き継ぐ作業が必要になります。

その後の執行停止や審査請求などの対応も必要になってきます。時間が限られていますので、計画的な対応が必要になってきます。

まずはとにかく相談しましょう

これら必要性に対する相談するデメリットとしては、費用や時間がかかる、恥ずかしい、意見が合わないときに不快に思う、など言ってしまえば取るに足らないものです。

繰り返すまでもないのですが、皆さんがお客様に対して「まずは相談しましょう」とおっしゃっているはずです。

とにかく相談してみましょう。

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